第一章 出逢い

サイバーコミックスとゼネプロ時代(その5)

Iくんとの件では、僕は自分の仕事もありながらもMに泣きつかれその合間を縫ってアシをした。 91年頃といえば、僕自身も月に2〜4本をこなしてしたくらいには忙しかったにも拘わらず、だ。ところがこうした件はこれに止まらず、以後もMの『尻拭い』を僕やまり…

サイバーコミックスとゼネプロ時代(その4)

Iくんは僕が出逢った中でいちばん仕事をしない作家だった。 最近は少なくなったのかもしれない。よその編集部でもカンヅメはあったが、ゼネプロではほぼ常態と化していた。とはいえ食事もぜんぶ編集部持ち。トーン代やアシ代も。ガイナのアニメ班用の寝部屋…

サイバーコミックスとゼネプロ時代(その3)

「原稿破って捨てたァ? まりのさんが?」 「ええ、俺びっくりしちゃいましたよ」 「どうして?」 「いや、聞いたら『もうこの原稿は要らないから』って。自分の納得できる出来じゃなかったからみたいです」 「そんな、もったいない-----まりのさんのナマ原なん…

サイバーコミックスとゼネプロ時代(その2)

平成元年。すでに季節がいつだったかは記憶が欠落しているが、時期を考えると秋くらいのことだったのだろうか。 もはや、細かいことは思い出せなくなってしまった。それだけ年月が過ぎたのだ。 西崎まりのは、ガイナックス(ゼネプロ)の『サイレントメビウス…

サイバーコミックスとゼネプロ時代(その1)

バンダイから「サイバーコミックス」というA5平綴じ本が発行されていた。 編集を委託されていたのはゼネラルプロダクツ。後のガイナックスである。僕の印象では、ゼネプロは主に編集部門として社内に存在していた。当時、ガイナックスは『トップをねらえ!』…

誰が殺した、コミックロビン? (その2)

「『ロビン』が出なくなっちゃったんだ…」 山田編集長から告げられたそれはあまりにも意表を突いた一言だった。 都の条例だったかに「有害図書指定」というのがある。 たとえば月刊誌においてこれに抵触したと見なされた場合、一度目は警察署に「お呼び出し…

誰が殺した、コミックロビン? (その1)

もちろん、「奴婢訓」に至るまでの間、まりのさんと僕との関係が進展していなかったわけではない。 正確なところは既に記憶を欠いてしまっているが、様々な状況から推測して、僕が初めてまりのさんの住む五反田へ行ったのがこの頃だったろうとほぼ確定できる…

奴婢訓(その2)

しばらく更新を休んでいる間、今後の構成について考えをまとめていました。 かつて私の高校時代、地理はAとB、という教科に分割されていました。いま現在それがどうなっているのかは知りませんが、それぞれ「地史」と「系統地理」という、分類方式による教科…

奴婢訓(その1)

実物のまりのさんを見た第一印象は 「オッサンじゃん…」だった。 たとえば僕も大好きな作家の松原香織氏なぞは、ある意味あの絵柄のとおりのイメージの、スタイリッシュで、いかにも繊細そうな風貌であった。 僕が「エロ漫画家」になろう、と思ったひとつの…

カズンズ

その日、午前四時。 電話の着信音で僕はふいに眠りから呼び戻された。相方の結城らんなからのコールだった。 「まりのさん、死んじゃったんだって!? 今、友達からメールが来たんだけど…」 「……ええ?」 仕事場で横になって一時間も経っていなかった。頭が一気…